デジタル遺品整理のやり方——写真・データ・クラウドの管理手順

お父さんの遺品整理を始めたら、タンスや引き出しにある「見える遺品」は片付いたのに、スマホやPCの「見えない遺品」だけが手付かずのまま残っています——。

相続手続きを進める遺族から、こうした声を頻繁に聞きます。総務省「通信利用動向調査2023」によれば、スマートフォンの個人保有率は77.3%に達しています。今や、ほぼすべての方にデジタル遺品が存在する時代です。

しかし、従来の遺品整理業者はデジタル領域には対応できません。「何から手をつければいいか」という困惑を抱えたまま、時間だけが過ぎていく——という状況に陥りやすいのがデジタル遺品整理の特徴です。

答えはシンプルです。優先順位があります。それに従えば、迷わない。

この記事では、デジタル遺品を6つのカテゴリに分類し、「金融系→契約系→クラウドデータ→SNS→ポイント系→その他」という優先順位で整理作業を進める具体的な手順を解説します。それぞれのカテゴリで何をすべきか、期限がある手続きはどれか、自力でできることと専門家が必要なことの区別も明確にします。

終活を検討しているP4の方には、「デジタル資産一覧表」を今日作ることが、家族の作業時間を10時間以上短縮するという具体的な貢献になることをお伝えします。


デジタル遺品とは何か——6つのカテゴリで全体像を把握する

デジタル遺品は、大きく6つのカテゴリに分類できます。まず全体像を把握することで、「何から手をつけるか」が見えてきます。

カテゴリ1——金融資産(相続財産に含まれる・最優先)

最優先で対応が必要なカテゴリです。

  • ネット銀行の預金: 楽天銀行・住信SBIネット銀行・PayPay銀行・ソニー銀行など
  • ネット証券の株式・投資信託: SBI証券・楽天証券・マネックス証券など
  • 暗号資産(仮想通貨): ビットコイン・イーサリアムなど(取引所保管分と個人ウォレット保管分)
  • 電子マネー残高: PayPay・楽天Edy・Suicaなど

これらはすべて相続財産に含まれます(民法第896条)。相続税申告の対象となり、申告期限(相続開始から10ヶ月以内)に直結するため、最も早く動く必要があります。

ネット銀行・証券口座の発見方法と相続手続きの詳細は、[ネット銀行・証券口座の相続手続き](spoke_new_17)で解説しています。

カテゴリ2——契約・課金(継続課金を止める・第2優先)

放置すると毎月お金が出続けるカテゴリです。

  • 動画配信:Netflix・Amazon Prime・Hulu・Disney+など
  • 音楽配信:Spotify・Apple Musicなど
  • クラウドストレージ:iCloud+・Google One・Dropboxなど
  • セキュリティソフト:ノートン・マカフィーなど(年額が多い)
  • 新聞・雑誌電子版、NHK受信料
  • 携帯電話契約本体

解約の優先順位は、月額料金が高いもの・次の更新日が近いものから着手します。各サービスの発見方法と解約手順の詳細は、[サブスク・有料サービスの解約手順](spoke_new_18)で解説しています。

カテゴリ3——SNS・コミュニケーション(なりすまし防止・第3優先)

  • SNSアカウント:Facebook・X(旧Twitter)・Instagram・LINE・TikTok・YouTubeなど
  • メールアカウント:Gmail・Yahoo!メール・iCloudメールなど

重要な注意: メールアカウントは、各種サービスのパスワードリセットに使われます。他のカテゴリの手続きが完了するまで、メールアカウントはすぐに削除しないでください。整理作業の「最後」まで保持しておくことを強くおすすめします。

放置リスクとして、なりすまし・乗っ取り詐欺(故人の名前で友人にメッセージが送られる被害)があります。各SNSの追悼化・削除手続きの詳細は、[SNSアカウントの死後対応](spoke_new_16)をご参照ください。

カテゴリ4——思い出(写真・動画・日記・ブログ)

金銭的価値はありませんが、感情的価値が最も高いカテゴリです。

  • スマートフォン内の写真・動画(カメラロール)
  • クラウドフォトライブラリ(iCloud写真・Googleフォト・Amazon Photos)
  • 故人が書いていたブログ・個人サイト(Ameba・はてなブログなど)
  • LINEのトーク履歴(端末のローカル保存のみ——スマホが開けなければ取り出せない)

後述しますが、クラウドサービスは「アカウントが長期間未使用になると自動削除される」リスクがあります。「後でゆっくり」では大切な写真が消えてしまうかもしれません。金融・契約の対応が終わったら、なるべく早く着手してください。

カテゴリ5——ポイント・マイル(期限切れ前に相続手続き)

多くのポイントは原則として相続できませんが、航空マイルは相続可能です。そして期限があります

ポイント・マイル 相続の可否 特記事項
ANAマイル 可能 死亡後6ヶ月以内に手続きが必要
JALマイル 可能 早期申請が推奨される
楽天ポイント 原則不可 残高確認のみ
dポイント 原則不可 残高確認のみ
Pontaポイント 原則不可 残高確認のみ
Tポイント(Vポイント) 原則不可(CCC規約) 残高確認のみ

ANAマイルの6ヶ月期限は特に重要です。 故人が航空系クレジットカード(ANA VISA等)を持っていた場合、大量のマイルが蓄積されている可能性があります。他の手続きに追われる中でも、この期限だけは見落とさないようにしてください。

カテゴリ6——その他(ゲーム・電子書籍・ドメイン・暗号資産の個人ウォレット)

電子書籍について知っておくべき重要な事実: Kindle(Amazon)・Apple Books・楽天Koboなどの電子書籍は「購入」ではなく「利用ライセンスの取得」です。アカウントが閉鎖されると、これまでに購入した電子書籍は一切読めなくなります。相続はできません。

暗号資産の個人ウォレットについての深刻なリスク: 取引所に預けていない暗号資産(ハードウェアウォレット・ソフトウェアウォレットで管理しているもの)は、秘密鍵(またはシードフレーズ)がわからなければ永久にアクセス不可能です。Chainalysis社の2020年の推計によれば、世界で約300〜400万BTC(全流通量の約20%)が秘密鍵紛失などの理由で永久に失われたとされています。

ドメイン・サーバー契約: 故人がブログ運営やビジネス目的でドメインを保有していた場合、移管手続きが必要です(お名前.com・Xdomainなどのドメイン事業者に相続手続きを問い合わせてください)。


デジタル遺品整理の優先順位——4段階で迷わない

全体像を把握したら、次の優先順位で行動します。一度にすべてを進める必要はありません。順番に着手することで、重大な見落としを防げます。

第1優先——金融系デジタル遺品(相続税申告・口座発見)

なぜ最優先か:

  • 相続税申告の期限(相続開始から10ヶ月以内)に直結する
  • 口座を発見・手続き完了するまでに時間がかかる
  • 株式・投資信託は「相続開始日の評価額」で申告する必要があり、早期の残高確認が必要

具体的な行動:

  1. 故人のスマホのアプリ一覧で、ネット銀行・証券のアプリがないか確認する
  2. メールで金融機関からの通知(取引明細・残高通知)を検索する
  3. 発見したら各機関に「残高証明書」の発行を依頼する
  4. 相続手続きを開始する

暗号資産については、取引所アプリ(bitFlyer・coincheck等)がスマホにインストールされているか確認します。個人ウォレットについては、ハードウェアウォレット本体(Ledger・Trezorなどの小型USB型デバイス)や、「シードフレーズ」と書かれた紙(12〜24個の英単語の列)が遺品の中にないか探してください。

詳細な手続き方法は[ネット銀行・証券口座の相続手続き](spoke_new_17)をご確認ください。

第2優先——契約系デジタル遺品(継続課金ストップ)

なぜ第2優先か: 放置すれば毎月お金が出続けるからです。

クレカ明細・App Store・Google Play・メール受信箱・キャリア決済の4ルートからサブスクを発見し、各サービスを解約します。

月額インパクトが最大なのは携帯電話の契約本体です。 月数千円〜1万円以上かかることが多く、第2優先の中で最も急ぐべき手続きです。キャリアショップまたは電話窓口で解約手続きを進めてください。

各サービスの発見・解約の詳細手順は[サブスク・有料サービスの解約手順](spoke_new_18)をご参照ください。

第3優先——クラウドデータ・思い出データの保全(自動削除リスク)

なぜ急ぐ必要があるか:

Googleは2023年に利用規約を改定し、「2年以上活動がないアカウントは削除することがある」というポリシーを明確化しました。Googleフォトに保存されていた故人の写真・動画が、将来的に削除される可能性があります。

具体的な行動:

iCloudデータを取り出す場合:

  • 生前にDigital Legacy(故人アカウント管理連絡先)が設定されていれば、指定された方が直接アクセスできます
  • 設定がない場合はAppleサポート(0120-277-535)に連絡し、「故人アカウントアクセス申請」を行います。死亡証明書・相続関係書類の提出が必要で、審査には数週間〜数ヶ月かかります

Googleデータを取り出す場合:

  • g.co/DeceasedUser(Googleの「故人のアカウントのコンテンツに関するリクエスト」フォーム)から申請します
  • 審査が通れば、Google Takeout(takeout.google.com)を使って写真・動画・メール等を一括ダウンロードできます
  • 処理には数週間〜数ヶ月かかる場合があります

ダウンロードしたデータの保存先: 外付けHDD(1TB/約5,000〜8,000円)を用意しておくと安心です。容量の大きいデータは高速Wi-Fi環境でのダウンロードを推奨します。重要な写真は外付けHDD+別のクラウドサービスの複数箇所にバックアップを取ってください。

「Googleのアカウント申請を出す」だけなら金融・契約の対処と並行して進めても構いません。審査に時間がかかるため、早めに申請を出しておくことをおすすめします。

第4優先——SNS・メールアカウントの整理

金融・契約・クラウドデータの整理が済んだ段階で、SNSとメールの整理に移ります。

メールアカウントは最後まで残す: 各種サービスのパスワードリセット・通知確認に使うため、他の手続きが完了するまで削除しないでください。

SNSの対応: Facebook・Instagram・X・LINEなど各サービスの公式フォームから、追悼化または削除の申請を行います。詳細は[SNSアカウントの死後対応](spoke_new_16)をご参照ください。

ブログ・個人サイト: 更新停止のアナウンスをするかどうか(運営の継続・移管・削除)を遺族が判断します。ドメインの自動更新設定になっている場合は、第2優先(契約系)の段階で確認が必要です。

第5優先——ポイント・マイルの相続申請

ANAマイル(6ヶ月以内!): ANA公式の「マイルの相続手続き」ページから相続届を取り寄せ、死亡診断書・相続関係書類を提出します。手続きが遅れるとマイルが失効します。故人がANAカードを保有していた場合は特に要注意です。

JALマイル: JALマイレージバンクのカスタマーサービスに問い合わせ、必要書類を提出します。期限についてはJALに直接確認することをおすすめします。

楽天ポイント・dポイントなど: 原則として相続できません。残高の確認はできますが、特別な手続きは不要です。

なお、ANAマイル・JALマイルは相続財産に含まれます。相続税申告が必要な場合は、財産評価通達に基づく評価額を申告書に含めてください。


クラウドデータの引き継ぎ手順——iCloud・Googleフォト・その他

iCloud(Apple)——Digital Legacyと公式申請の2ルート

ルート1(生前設定あり)——Digital Legacy:

故人が生前にDigital Legacy(故人アカウント管理連絡先)を設定していた場合、指定された連絡先がアクセスキーを使ってiCloudデータにアクセスできます(有効期間3年)。

アクセス可能なデータ:iCloud Drive、メモ、写真、メール、連絡先、カレンダー、iCloudバックアップなど。

ルート2(生前設定なし)——Appleサポートへの申請:

Appleサポート(0120-277-535)に電話し、「故人のApple IDアカウントへのアクセス申請をしたい」と伝えます。死亡証明書と相続関係書類を提出し、審査(数週間〜数ヶ月)を経て承認されると、一時的なアクセスキーが発行されます。

データのダウンロード手順: iCloud.com → 右上のプロフィール → 「デジタル遺産を管理」 → 各種データをダウンロード

写真・動画の容量が大きい場合は相当な時間がかかります。高速Wi-Fi環境を用意してから始めましょう。

重要: iCloudバックアップからLINEのトーク履歴を復元できる場合があります。端末のロックが解除できなくても、iCloudバックアップにアクセスできればトーク履歴を取り出せる可能性があります。

Googleアカウント——写真・Gmail・ドライブの一括申請

申請先: g.co/DeceasedUser(「故人のアカウントのコンテンツに関するリクエスト」フォーム)

本人確認書類と死亡証明書を提出し、Googleによる審査を経て、承認されたデータへのアクセス権が付与されます。

対象データ: Googleフォト(写真・動画)・Gmail(メール)・Googleドライブ(ファイル)・Googleマップ(タイムライン)など

データのダウンロード方法: Google Takeout(takeout.google.com)を使って全データをZIP形式で一括エクスポートできます。

注意: Googleのアカウントを「引き継ぐ」ことはできません。あくまで「データをダウンロードする」権限が付与される形です。処理には数週間〜数ヶ月かかる場合があり、承認されなかった場合はGoogleから理由の説明が届きます。

その他のクラウドサービス(Dropbox・OneDrive・Amazon Photos等)

Dropbox: Dropboxカスタマーサポート(support.dropbox.com)に死亡証明書を提出し、データのダウンロードまたはアカウント閉鎖を依頼します。ビジネスプランの場合は組織の管理者を通じた手続きになります。

OneDrive(Microsoft 365): Microsoftの「近親者のMicrosoftアカウントへのアクセス」ページから申請し、書類提出→審査→一時的なアクセス権付与という流れです。

Amazon Photos: Amazonプライムに含まれる写真保存サービスです。故人のAmazonアカウントにアクセスできれば写真のダウンロードが可能です。アカウントにアクセスできない場合はAmazonカスタマーサービスに相談してください。

各クラウドサービスには「長期未使用アカウントの削除ポリシー」があり、サービスごとに1〜2年と基準が異なります。早めの申請・バックアップを強くおすすめします。


暗号資産の相続——秘密鍵がなければ永久に失われる

デジタル遺品の中に暗号資産・投資信託・外国株が含まれていた場合、相続税の評価方法や申告手続きは複雑です。相続に強い税理士への早めの相談をおすすめします。[初回無料相談を実施している税理士事務所はこちらから](cv_03)。

取引所保管の暗号資産——相続手続きは可能

bitFlyer・coincheck・GMOコイン・Bitbankなど国内の暗号資産取引所に預けている場合は、通常の金融口座と同様に相続手続きが可能です。

手続きの流れ:

  1. 各取引所の相続手続き窓口に連絡する
  2. 相続届・死亡証明書・相続関係書類を提出する
  3. 審査後、相続人名義の口座への移管または現金化を選択する

相続税の評価方法: 死亡日の取引価格(取引所の終値)で評価します(国税庁「暗号資産に関する税務上の取扱いについて」)。所得税・相続税の両面で取り扱いが複雑なため、相続財産に含まれる場合は必ず税理士に相談してください。

個人ウォレットの暗号資産——秘密鍵なしは完全な喪失

ハードウェアウォレット(Ledger・Trezor等)またはソフトウェアウォレット(MetaMask等)に保管している暗号資産は、秘密鍵(またはシードフレーズ)がわからなければ絶対にアクセスできません

Chainalysis社の2020年の推計によれば、世界で約300〜400万BTC(全流通量の約20%)が秘密鍵の紛失等により永久に失われたとされています。これは取り返しのつかない喪失です。

遺品の中を探すべきもの:

  • 小型USB型デバイス(Ledger・Trezorなどのハードウェアウォレット本体)
  • 「シードフレーズ」または「リカバリーフレーズ」と書かれた紙(12〜24個の英単語の列)
  • 金属板に英単語が刻まれたもの(高価値の暗号資産保有者は金属板に刻む場合があります)

金額が大きい場合は、弁護士・税理士への相談を最優先してください。


故人のプライバシーへの配慮——見るべきでないものがある可能性

デジタル遺品にはプライバシーへの配慮が必要

故人のスマホ・PCの中には、遺族に見せることを想定していなかった内容が含まれている可能性があります。個人的な日記・メモ、恋愛や友人・職場に関するメール・メッセージ、医療情報など、「知らなければよかった」と感じる情報に触れてしまう場合があります。

推奨するアプローチ:

  1. 相続手続き上必要な情報(金融アカウント・重要書類)を目的を持って探す
  2. 故人の個人的なメッセージや日記は、内容を他の相続人や第三者に共有しない
  3. 「何を確認したか」の記録を相続人全員で共有し、透明性を保つ

法的な観点から: 電気通信事業法第4条は「通信の秘密」を定めており、故人のメール・SNSメッセージは相続人であっても不必要に第三者に開示してはならないとするのが法的な原則です(実務上はグレーゾーン部分を含みますが、慎重な対応が求められます)。

不要なデータの削除——故人のプライバシーを守るために

相続手続きが完了し、取り出したい思い出データも保全できたら、端末や不要なアカウントの整理に移ります。

スマホ・PCの廃棄方法:

初期化(工場出荷時設定へのリセット)だけではデータが復元可能な場合があります。確実なデータ消去のためには、専門業者(NIST準拠のデータ消去サービス)への依頼、または物理破壊(ハードドライブを専用機器でシュレッダー処理)をおすすめします。

個人情報保護法(平成15年法律第57号)の観点からも、個人情報が含まれる機器の廃棄は適切な処理が必要です。「捨てるだけ」で済ませることは避けてください。


デジタル遺品整理業者——依頼すべきか・費用と選び方

デジタル遺品整理業者とは何ができるか

2020年代からデジタル遺品整理を専門とする業者が登場しています。

業者が対応できること:

  • データの整理・バックアップ(写真・動画の抽出・外付けHDDへの保存)
  • 不要データの安全な消去(NIST準拠の消去ソフト等)
  • ファイルの分類・整理
  • オンラインアカウントの解約代行(プラットフォームへの申請サポート)

業者にできないこと:

  • スマホのロック解除(メーカーの仕様上不可能)
  • アカウントへのログイン(本人認証が必要な行為)
  • 法的な相続手続き

費用の目安: 5万〜15万円程度(作業内容・データ量・依頼範囲による)

信頼できる業者を見分ける5つのポイント:

  1. ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)認証を取得している
  2. 費用・作業範囲が事前に明示されている
  3. 守秘義務契約書を締結してくれる
  4. 「スマホのロックを必ず解除できる」などの誇大広告をしていない
  5. 実績・口コミが確認できる

「ロック解除保証」を謳う業者は、実際には不可能なことを約束している可能性が高く、要注意です。

自力でできる作業・専門家が必要な作業の分類

自力でできること:

  • クラウドデータのダウンロード(申請フォームへの入力・書類提出)
  • サブスクの解約(ほとんどはWeb・電話で対応)
  • SNSの追悼化・削除申請(公式フォームへの入力)
  • ポイント・マイルの確認・申請

専門家(弁護士・司法書士・税理士)が必要なこと:

  • 相続税申告(税理士)
  • 遺産分割協議・相続登記(司法書士・弁護士)
  • 相続放棄の判断(弁護士)
  • 暗号資産の税務評価(税理士)

すべてを自力でやる必要はありません。「精神的な負担を減らすこと」も立派な選択です。一人で抱え込まず、必要に応じて専門家や業者を活用しながら、無理のないペースで進めてください。


P4向け——今日から作る「デジタル資産一覧表」

デジタル資産一覧表のテンプレートと記載項目

遺族が最も困るのは「どこに何があるかわからない」という段階です。デジタル資産一覧表を作っておくことで、その時間を大幅に短縮できます。

一覧表に記録する項目:

項目 記入例
カテゴリ 金融 / 契約 / SNS / 思い出 / ポイント / その他
サービス名 楽天銀行、Netflix、Facebookなど
ID・ユーザー名 example@gmail.com
登録メールアドレス example@gmail.com
おおよその残高・内容 約50万円、株式保有あり、月990円
支払い方法 三井住友VISA、口座引き落とし
死後の対応希望 引き継ぐ / 解約 / 削除 / 追悼化 / そのまま
更新メモ(最終更新日) 2026年3月更新

パスワードの扱いについて: パスワードそのものを記載するのではなく、「パスワード管理アプリに保存済み」とメモし、そのアプリのマスターパスワードをエンディングノートの別ページ(または安全な場所)に記録しておく方法が現実的です。

年1回の棚卸し更新を習慣化しましょう。誕生日・年末・新年など、覚えやすい日に設定すると続けやすいです。

デジタル資産一覧表を作ることで得られる3つのメリット

メリット1——遺族の調査時間を大幅短縮

デジタル資産一覧表がない場合、遺族がすべてのサービスを発見するまでに平均20〜40時間かかるという試算があります(各種デジタル終活事業者の調査参考)。一覧表があれば確認・手続きにかかる時間を半分以下に短縮できます。

メリット2——申告漏れ・課金見落としのリスクゼロ

ネット銀行・証券口座の相続税申告漏れ、サブスクの継続課金——どちらも「知らなかった」が原因で起きます。一覧表があれば、どちらのリスクも大幅に低減できます。

メリット3——家族への最後の「配慮の証」

「こんなにきちんと整理してくれていたんだ」という遺族の感謝は、終活を「自分のため」ではなく「家族のため」の行為として再定義します。デジタル資産一覧表は、遺品整理という負担の重い時間の中で、家族が受け取る最後の贈り物になります。

デジタル遺品の整理は一人で抱え込む必要はありません。スマホのロック解除・ネット銀行の手続き・SNS対応・サブスク解約、それぞれの詳しい手順は各専門記事で解説しています。デジタル終活の全体像は[デジタル終活ガイド(hub_10)](hub_10)からご確認ください。


よくある質問(FAQ)

Q1:デジタル遺品整理はいつから始めれば良いですか?

A:相続税申告に関わる金融系のデジタル遺品(ネット銀行・証券)については、相続開始後できるだけ早く(目安として1ヶ月以内)調査を始めることをおすすめします。思い出データ(写真・動画)についても、クラウドサービスのアカウント削除リスクがあるため、申請だけでも早めに進めることが理想です。精神的に辛い時期であることは十分理解しています。それでも、「クラウドデータの削除リスク」という時間的制約があるため、少しずつでも早期に動くことが大切です。


Q2:デジタル遺品整理を業者に依頼したいのですが、怪しい業者を見分けるにはどうすればいいですか?

A:信頼できる業者を見分けるポイントは5つです。①ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)認証を取得している、②費用・作業範囲が事前に明示されている、③守秘義務契約書を締結してくれる、④「スマホのロックを必ず解除できる」などの誇大広告をしていない、⑤実績・口コミが確認できる。「ロック解除保証」を謳う業者は実際には不可能なことを約束している可能性が高く、要注意です。


Q3:故人の写真データをクラウドからダウンロードしたいのですが、容量が心配です。

A:iCloud・Googleフォト等のクラウドに大量の写真・動画がある場合、数十GB〜数百GBになることがあります。保存先として外付けHDD(1TB約5,000〜8,000円)を用意しておくと安心です。ダウンロードには時間がかかるため(100GBなら高速Wi-Fi環境で数時間)、余裕を持って始めることをおすすめします。重要な写真は外付けHDD+別のクラウドサービスの複数箇所にバックアップを取ることを強くおすすめします。


Q4:電子書籍(Kindle・楽天Kobo)は相続できますか?

A:できません。Kindle(Amazon)・Apple Books・楽天Koboなどの電子書籍は「購入」ではなく「利用ライセンスの取得」です。アカウントが閉鎖されると、購入した電子書籍は読めなくなります。これは電子書籍サービス全般に共通するデジタルコンテンツの性質です(著作権法に基づく利用権の終了)。故人が多数の電子書籍を持っていた場合、アカウント閉鎖前にリストを保存しておくことは可能ですが、内容を引き継ぐことはできません。


Q5:ANAマイルの相続手続きに「6ヶ月以内」という期限があると聞きましたが、本当ですか?

A:本当です。ANA公式の「マイルの相続手続き」によれば、マイルの相続は被相続人の死亡後6ヶ月以内に手続きを完了する必要があります。手続きが遅れるとマイルが失効する可能性があります。JALマイルも相続可能ですが、期限についてはJALに直接確認することをおすすめします。ANAマイルの相続には、ANA「マイルの相続手続き」ページからの申請が必要です。故人がANA VISA等の航空系クレジットカードを持っていた場合はマイルがたまっている可能性が高いため、早急に確認してください。


本記事の情報は2026年3月時点のものです。各サービスの仕様・手続き方法・ポリシーは変更される場合があります。最新情報は各サービスの公式サイトまたはカスタマーサポートにてご確認ください。本記事は情報提供を目的としており、法律・税務に関する個別のアドバイスを提供するものではありません。具体的なご相談は、弁護士・司法書士・税理士などの専門家にご相談ください。

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