「家族信託って、費用が高そうで踏み出せない」
そう感じている方は多いと思います。でも、「高そう」という感覚は、具体的な金額を知らないままの印象論かもしれません。実際の費用感を把握すれば、「やっぱり高い」と感じる方もいれば、「これくらいなら十分検討できる」と感じる方もいます。
この記事では、家族信託にかかる費用を4つの内訳に整理し、モデルケースの総額シミュレーションをお見せします。また「費用を払う価値があるかどうか」の判断軸として、成年後見の長期費用との比較も行います。
さらに、「どの専門家に頼めばいいのかわからない」という不安を解消するために、信頼できる司法書士・弁護士を見つける5つのポイントも解説します。
「費用の全体像を把握した上で、相談するかどうかを決めたい」——その判断の材料として、ぜひ最後までお読みください。
家族信託の費用は「4つの内訳」で決まる
家族信託にかかる費用は、以下の4種類に分類できます。これらの合計が「家族信託の総費用」です。
内訳① 専門家(司法書士・弁護士)への報酬——30〜70万円
費用の中で最も大きな割合を占めるのが、専門家への報酬です。
この報酬には通常、以下のすべてが含まれます。
- 初回ヒアリング・家族会議の支援
- 家族信託の設計(受益者連続型・権限の設計など)
- 信託契約書の作成
- 公証役場との調整・公正証書化の代理
- 信託登記の申請代理
- 信託口口座の開設支援
相場は、信託財産の規模と設計の複雑さによって異なります。
| 設計の複雑さ | 相場の目安 |
|---|---|
| シンプル(現金のみ、家族構成が単純) | 25〜40万円 |
| 標準(不動産あり、子ども1〜2人) | 40〜60万円 |
| 複雑(複数不動産、受益者連続型、税務調整あり) | 60〜100万円以上 |
事務所によっては「信託財産の総額に対して○%」という形で算定するところもあります。財産が多い場合は報酬も上がる計算です。
必ず複数の事務所に見積もりを取り、項目ごとの内訳が明示されているかを確認してください。「総額○○万円」という曖昧な提示をする事務所には注意が必要です。
内訳② 公正証書作成費用——3〜10万円
信託契約書を公証役場で公正証書にする際にかかる費用です。公証人手数料(公証人手数料令に基づく)と実費(用紙代・謄本代など)で構成されます。
公証人手数料は、信託財産の「目的価額」(金額)によって決まります。
| 目的価額 | 公証人手数料 |
|---|---|
| 500万円未満 | 11,000円以下 |
| 500万〜1,000万円未満 | 17,000円 |
| 1,000万〜3,000万円未満 | 23,000円 |
| 3,000万〜5,000万円未満 | 29,000円 |
| 5,000万〜1億円未満 | 43,000円 |
これに用紙代(1枚250円)・謄本代(1枚250円)が加算されます。信託契約書はページ数が多くなる傾向があるため、実費も無視できません。
総額の目安は3〜10万円です。自宅不動産(評価額2,000〜3,000万円程度)が信託財産の場合、公正証書費用は4〜6万円程度になることが多いです。
内訳③ 信託登記費用(司法書士報酬)——5〜15万円
不動産を信託財産に含める場合にのみ発生する費用です。
法務局への信託登記申請を司法書士が代理で行います(司法書士の独占業務)。申請のための書類準備・法務局との調整・完了後の登記事項証明書の取得なども含まれます。
相場は5〜15万円程度(不動産の件数・複雑さによって異なります)。複数の不動産をまとめて信託する場合は、1件ごとに追加報酬が発生することが多いです。
財産が現金のみ(不動産なし)の場合は、内訳③は不要です。 現金のみのシンプルなケースでは総費用を大幅に抑えられます。
内訳④ 不動産登録免許税——固定資産評価額の0.3〜0.4%
信託登記の際に国に納める税金です(登録免許税法に基づく)。
税率:
- 土地:固定資産評価額 × 0.3%
- 建物:固定資産評価額 × 0.4%
計算例(土地1,500万円・建物500万円の場合):
- 土地:1,500万円 × 0.3% = 45,000円
- 建物:500万円 × 0.4% = 20,000円
- 合計:65,000円
固定資産評価額は、毎年4〜6月に自治体から送付される「固定資産税・都市計画税 課税明細書」(納税通知書)に記載されています。手元にある場合は確認してみてください。
なお、信託登記の登録免許税(0.3〜0.4%)は、通常の所有権移転登記(2%)に比べて大幅に低く設定されています。これも家族信託のコスト面でのメリットの一つです。
モデルケース別 費用シミュレーション
ケース1——自宅(固定資産評価額3,000万円)を信託するケース
設定: 自宅(土地2,000万円・建物1,000万円)を信託財産とする。委託者:70歳の父親。受託者:50歳の長男。シンプルな設計(受益者は父親のみ)。
| 費用の種類 | 金額の目安 |
|---|---|
| 専門家報酬(設計・契約書・登記申請代理) | 50万円 |
| 公正証書費用(手数料+実費) | 4万円 |
| 信託登記の司法書士報酬 | 10万円 |
| 登録免許税(土地60,000円+建物40,000円) | 10万円 |
| 合計(目安) | 74万円 |
ケース2——現金1,000万円のみを信託するケース(不動産なし)
設定: 金銭(現金・預金)1,000万円のみを信託財産とする。受託者は長女。シンプルな設計。
| 費用の種類 | 金額の目安 |
|---|---|
| 専門家報酬(設計・契約書作成) | 30万円 |
| 公正証書費用 | 3万円 |
| 信託登記・登録免許税 | 不要 |
| 合計(目安) | 33万円 |
不動産がない場合、費用は大幅に抑えられます。
ケース3——自宅+投資用アパート(固定資産評価額合計8,000万円)を信託するケース
設定: 自宅(評価額3,000万円)+収益アパート(評価額5,000万円)を信託財産とする。受益者連続型信託の設計あり(父→母→長男)。
| 費用の種類 | 金額の目安 |
|---|---|
| 専門家報酬(複雑な設計・複数不動産) | 80〜100万円 |
| 公正証書費用 | 6万円 |
| 信託登記の司法書士報酬(2件) | 20〜25万円 |
| 登録免許税(8,000万円規模の概算) | 20〜25万円 |
| 合計(目安) | 130〜160万円 |
財産規模が大きくなるほど、専門家報酬と登録免許税が増加します。
「成年後見の費用」と長期比較すると——家族信託はいつから得になるか
家族信託の初期費用が「高い」かどうかは、成年後見との長期比較をすると見えてきます。
法定後見(専門職後見人)の長期費用の試算:
| 期間 | 月3万円の場合の総費用 | 月5万円の場合の総費用 |
|---|---|---|
| 5年間 | 180万円 | 300万円 |
| 10年間 | 360万円 | 600万円 |
| 15年間 | 540万円 | 900万円 |
最高裁判所「成年後見事件の概況」(2023年)によると、法定後見で選任される後見人の約70%は専門職(司法書士・弁護士・社会福祉士)です。
厚生労働省の研究では、認知症発症後の平均生存期間は10年以上とされています。つまり、法定後見を使い続けると、数百万円の後見人報酬が発生することが現実的に想定されます。
一方、家族信託では受託者が家族であれば継続的な報酬は原則かかりません(信託監督人を設ける場合は別途費用が発生します)。
家族信託の初期費用74万円 vs 成年後見の10年間費用360〜600万円——長期的な視点から見ると、家族信託は「先行投資」として合理的な選択になります。
専門家の選び方——信頼できる司法書士・弁護士を見つける5つのポイント
ポイント① 家族信託の実績・専門性を確認する
家族信託は実務としての歴史がまだ浅く(信託法の現行法施行は2007年)、全ての司法書士・弁護士が得意としているわけではありません。
確認のポイント:
- 事務所のウェブサイトに家族信託の解説記事・実績件数が記載されているか
- 「一般社団法人 家族信託普及協会」「一般社団法人 民事信託推進センター」などの認定資格者であるか
- 初回面談で「家族信託の年間取り扱い件数はいくらですか?」と質問する
経験の浅い専門家が作成した信託契約書は、一見正しそうに見えても重要な条項が抜けている場合があります。実績を持つ専門家を選ぶことが、後のトラブル防止に直結します。
ポイント② 税理士・FPとの連携体制があるか
家族信託の設計では税務面の確認が不可欠です。具体的には、受益権の移転に伴う贈与税の問題、信託財産から生じる収益の受益者課税(所得税法第13条)、委託者・受益者死亡時の相続税への影響など、税理士の知見なしには判断できない事項があります。
司法書士単独で対応する事務所よりも、税理士と連携しているグループや、税務相談も含めたサービスを提供している事務所の方が、設計の安全性が高い傾向があります。
初回相談時に「設計段階で税務確認をしてもらえますか?」と確認してください。
ポイント③ 金融機関との連携実績があるか
信託口口座の開設は、金融機関ごとに審査基準が異なります。一部の金融機関は対応していないか、書類要件が厳しかったりします。
地域の金融機関との連携実績がある司法書士は「この銀行なら開設しやすい」という実務知識を持っており、スムーズな口座開設をサポートしてくれます。
「信託口口座の開設でお付き合いのある金融機関はどこですか?」と質問することで、この実績を確認できます。
ポイント④ 費用の内訳が明確・書面で見積もりを出してくれる
「トータルで○○万円くらいかかります」という曖昧な提示をする事務所は要注意です。
信頼できる事務所は、以下の項目を別々に記載した見積書を出してくれます。
- 専門家報酬(設計・契約書作成・登記申請代理)
- 公正証書費用(手数料の計算根拠と実費の見込み)
- 信託登記の報酬(物件数・複雑さによる変動がある場合はその旨を明記)
- 登録免許税の計算根拠(固定資産評価額と税率の明示)
複数の事務所に見積もりを取り、内訳と総額を比較しましょう。「安さだけで選ぶ」のではなく、内訳の透明性と専門性のバランスで評価することをおすすめします。
ポイント⑤ アフターフォロー体制があるか
家族信託は「設定して終わり」ではありません。
設定後に受託者(子ども)が判断に迷ったとき、信託内容を変更する必要が生じたとき、受益者が死亡したとき——これらの場面でも専門家のサポートが必要になります。
確認すべき点:
- 設定後の相談は別料金か、何回まで含まれるか
- 信託終了時の手続きサポートは含まれるか
- 年間顧問契約・相談パックなどのアフターフォローサービスがあるか
長期的なサポートに慣れている事務所を選ぶことが、安心した家族信託の継続につながります。
費用を抑えるための注意点——「安さ」の落とし穴
格安テンプレートによる欠陥契約のリスク
インターネット上には「家族信託 契約書 テンプレート 無料」というコンテンツが存在します。しかし、それをそのまま使うことは非常に危険です。
理由①:家族の状況・財産構成に合わせた設計が必要なため、汎用テンプレートでは不十分 理由②:信託法の要件を満たさない条項がある場合、契約が無効になるリスクがある 理由③:遺留分侵害・税務上の問題・受託者の権限不足など、後から発覚する問題の温床になる
「最初に安く済ませようとして、後から高くつく」——これは家族信託の失敗事例でよく聞かれるパターンです。
適正な費用負担の考え方
費用について、次のようなフレームで考えてみてください。
「60〜90万円の出費」ではなく、「自宅(数千万円の資産)を認知症リスクから守るための保険」
「成年後見の長期費用(数百万円)を回避するための先行投資」
家族信託の設定費用が自宅不動産の価値に対して占める割合は、多くの場合1〜3%台です。適切な設計への投資として考えると、費用の見え方が変わるはずです。
複数の事務所に費用の見積もりを依頼することが、最初のステップです。初回無料で相談できる司法書士事務所を紹介していますので、まずは一度お気軽にご相談ください。
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[→ 司法書士への無料相談はこちら(cv_03)]
よくある質問(FAQ)
Q1. 家族信託の費用は一度払えばそれで終わりですか?
A. 初期設定費用(専門家報酬・公正証書費用・登記費用・登録免許税)は基本的に一度きりです。ただし、不動産を信託財産とした場合は固定資産税(信託財産から支出)、修繕費、賃貸管理費などが継続的に発生します。信託内容を変更する際は変更契約書の作成費用・再登記費用が別途かかります。信託監督人を設ける場合は継続的な報酬も発生します。
Q2. 司法書士と弁護士、どちらに依頼すべきですか?
A. 家族信託の設計・契約書作成・登記申請は、司法書士でも弁護士でも依頼できます。費用面では一般的に司法書士の方がやや低い傾向があります。弁護士への依頼が有利な場合は、家族間の紛争(兄弟間の合意が取れていない、遺留分問題が複雑など)が絡むケースです。一般的な家族信託の設計では、家族信託の実績を持つ司法書士への依頼が最もポピュラーです。
Q3. 無料相談で何を聞けばいいですか?
A. 以下を事前に準備して相談すると効率的です。①固定資産税の納税通知書(不動産の評価額確認用)。②家族構成のメモ(委託者・受託者候補・その他の相続人)。③信託したい財産のリスト(不動産・現金・その他)。相談時に確認すべき点:担当者の家族信託の取り扱い件数、総費用の見積もり(内訳別)、信託口口座が開設できる金融機関の紹介の可否、設定後のアフターフォロー体制。
Q4. 費用の分割払いはできますか?
A. 司法書士・弁護士事務所によっては分割払いに対応しているところもありますが、一括払いを原則とする事務所が多いです。公正証書費用・登録免許税は分割が難しいことが多いです。費用の工面が難しい場合は、事前に「分割払いは可能ですか?」と相談してみてください。なお、家族信託の設定費用は相続税の計算上控除されるものではないため、税務上の処理については税理士に確認することをおすすめします。
Q5. 費用は信託財産から払ってもいいですか?
A. 信託設定の初期費用を信託財産から支出することは、信託契約の条項次第で可能です。ただし、信託口口座は信託設定後に開設されるため、初期費用は通常、委託者・受託者の個人口座から支払い、設定後に信託財産から精算する形が多いです。この取り扱いも事前に専門家に確認しておくと安心です。
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本記事の情報は2026年3月時点のものです。専門家報酬・公証人手数料等は事務所・公証役場によって異なります。最新の費用については各専門家に直接お問い合わせください。個別の法律・税務的なご相談は必ず専門家(司法書士・弁護士・税理士)にご依頼ください。