相続放棄、遺産分割調停、成年後見の申立て——相続に関する多くの手続きは家庭裁判所で行います。しかし「どの裁判所に行けばいいのか」「何を持って行けばいいのか」がわからず、最初の一歩を踏み出せない方が多くいます。
この記事では、相続で家庭裁判所を使う場面ごとに管轄の調べ方と手続きの基本的な流れを整理します。
相続で家庭裁判所を使う場面一覧
| 手続き | 管轄の基準 | 申立て期限 | 費用 |
|---|---|---|---|
| 相続放棄 | 被相続人の最後の住所地 | 3ヶ月以内 | 収入印紙800円+切手 |
| 限定承認 | 被相続人の最後の住所地 | 3ヶ月以内 | 収入印紙800円+切手 |
| 熟慮期間の伸長 | 被相続人の最後の住所地 | 3ヶ月以内 | 収入印紙800円 |
| 遺産分割調停 | 相手方の住所地 or 合意した裁判所 | なし | 収入印紙1,200円+切手 |
| 遺言書の検認 | 遺言者の最後の住所地 | なし(ただし速やかに) | 収入印紙800円+切手 |
| 成年後見の申立て | 本人の住所地 | なし | 収入印紙800円+鑑定費用 |
| 特別代理人の選任 | 未成年者の住所地 | なし | 収入印紙800円 |
| 相続財産清算人の選任 | 被相続人の最後の住所地 | なし | 収入印紙800円+予納金 |
最も注意が必要なのは「管轄」です。 間違った裁判所に申立てると、移送(正しい裁判所への転送)となり時間をロスします。
管轄の調べ方
Step 1: 「最後の住所」を確認する
多くの手続きで管轄の基準となるのは「被相続人の最後の住所地」です。これは住民票の除票(死亡届提出後に市区町村で取得)で確認できます。
Step 2: 裁判所HPで管轄を検索する
裁判所のWebサイトで「裁判所の管轄区域」を検索できます。市区町村名を入力すると、管轄の家庭裁判所が表示されます。
Step 3: 管轄が複数ある場合
遺産分割調停は、原則「相手方の住所地」を管轄する家庭裁判所に申立てます。相手方が複数いる場合は、いずれかの相手方の住所地を選べます。また、当事者全員の合意があれば、合意した裁判所に申立てることも可能です。
申立ての基本的な流れ
すべての手続きに共通する基本フローは以下の通りです。
①必要書類の準備
手続きごとに異なりますが、共通して必要なものは:
- 申立書(裁判所HPからダウンロード可能)
- 被相続人の戸籍謄本(出生〜死亡)
- 申立人の戸籍謄本
- 収入印紙・切手
②申立書の作成
裁判所HPに各種申立書の書式と記載例が掲載されています。記載例に従って記入すれば、弁護士なしでも作成可能です。ただし、遺産分割調停や成年後見など複雑な手続きは弁護士・司法書士への依頼を推奨します。
③裁判所への提出
窓口に直接持参 または 郵送 で提出できます。郵送の場合は、返信用封筒(切手貼付)を同封してください。
④審理
手続きの種類によって異なります:
- 相続放棄・限定承認: 書面審査(照会書への回答)のみ。出頭不要のケースが多い
- 遺産分割調停: 月1回程度の期日に出頭。調停委員が間に入って話し合い
- 成年後見: 面接調査・鑑定を経て審判
⑤結果通知
審判書・受理通知書等が郵送で届きます。
裁判所の「手続き案内」を活用する
各家庭裁判所の窓口では、手続き案内を無料で受けられます。
- 予約不要(ただし混雑時は待ち時間あり)
- どの書類が必要か、どこで入手するかを教えてもらえる
- 法的なアドバイス(「放棄すべきか」等の判断)はもらえない
手続きの進め方がわからないときは、まず裁判所の窓口に行くのが最も手っ取り早いです。
全国の主要家庭裁判所
| 裁判所 | 所在地 | 管轄の目安 |
|---|---|---|
| 東京家庭裁判所 | 千代田区霞が関 | 東京23区の大部分 |
| 東京家裁 立川支部 | 立川市緑町 | 多摩地域 |
| 大阪家庭裁判所 | 大阪市北区西天満 | 大阪市・北摂エリア |
| 名古屋家庭裁判所 | 名古屋市中区三の丸 | 名古屋市・尾張エリア |
| 福岡家庭裁判所 | 福岡市中央区城内 | 福岡市・北九州の一部 |
| 札幌家庭裁判所 | 札幌市中央区大通西 | 札幌市・石狩管内 |
| 仙台家庭裁判所 | 仙台市青葉区片平 | 仙台市・宮城県の大部分 |
| 広島家庭裁判所 | 広島市中区上八丁堀 | 広島市・広島県西部 |
| 高松家庭裁判所 | 高松市丸の内 | 高松市・香川県全域 |
各裁判所の詳細な管轄区域は、裁判所HPで確認してください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 裁判所に行くのに弁護士は必要ですか?
相続放棄や遺言書の検認など、書類の提出だけで済む手続きは弁護士なしでも可能です。遺産分割調停は弁護士なしでも参加できますが、相手方が弁護士を付けている場合は不利になる可能性があります。
Q2. 裁判所の手続きにはどのくらい時間がかかりますか?
| 手続き | 期間目安 |
|---|---|
| 相続放棄 | 1〜2ヶ月 |
| 遺言書の検認 | 1〜2ヶ月 |
| 遺産分割調停 | 6ヶ月〜2年 |
| 成年後見の申立て | 2〜4ヶ月 |
Q3. 平日に裁判所に行けません。土日に手続きできますか?
裁判所は平日のみ(8:30〜17:00)の対応です。郵送で申立てることは可能なので、平日に行けない場合は郵送を活用してください。調停の期日も平日のみですが、弁護士に代理出頭を依頼することもできます。
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